2020-01-01から1年間の記事一覧
イノウヘイハチとやら、 敵ながら、天晴れであったぞ! 見事な豪気っぷりであった! またお会い居たそう。 今は去らばじゃ。 はっはははははははははははははは…! …さて、さて。 また一からやり直しじゃ。 まずは、誰に取り憑くとしようぞ。 おや、誰かがこ…
事故は、悪意ではなく不注意から起きる。 何も考えずに犯行に及ぶ凶悪犯罪者も現れた。 ヒトの心が読めたって、この世はちっとも楽じゃない。 さとりは、全てを覚って、世の中から居なくなった。
木から下がってくる怪異。武士は刀を構えていた。森の中を静かに進む。 湿った風が吹き、木々の隙間から馬の首が下がった。閃光一閃、馬の首は切り払われた。 木々を見上げるが何もない。 馬の首は血を出しながら転がっている。武士はさらに進む。 湿った風…
ワシらがこの国に来たのはもう二千年以上前、稲と一緒に渡ってきた。 神としてだ。崇められて、秋には盛大な祭りもあったし、 河が溢れれば人柱ももらった。それが、世の中がすすみ、 いつしか妖怪と呼ばれ、退治される同胞も出た。ワシらは隠れてすむように…
子供の代わりに生まれてくる。 囲炉裏の自在鉤を伝って屋根に逃げる。 妊婦に見せると気が触れるので、見てしまう前に殺してしまう。そう言い聞かせておいて、 生まれた瞬間、妊婦が不安のあまり、自在鉤に目を遣った刹那、赤子から目を逸らした刹那、 臍の…
今日は、袖をひいてはくれないのか…。 遥かに川を見下ろす橋のたもとで男は呟いた。辛い会社。生活の無い家。 生きる意味の無い生活。 ある日、川を眺めていると、確かにはっきりと、袖を引かれたー川の方に。 「誰かが解ってくれている」逆にそう感じた。 …
ペットが可愛くなくなったから、 歳を取って懐かなくなったから、 新しいのを飼おうかな。 増えても何だし、今のペットは…。 食べてしまおう。 にゃあ、にゃあ。
イナゴも食べ尽くした。 大地のヒビはますます深く、広くなっていく。 暑さと渇きでまともな意識ではない。 在らぬ物も見え始める。干からびた大地に跳び跳ねる怪物を見た。 目がひとつ、手がひとつ、足も一本。 ひとまわり大きく見える太陽を背にして、 嬉…
小人の国に流れ着いた。 蒸し暑く、我が国の気候とは違った。 彼らは膚が黄色く、瞳と髪が黒く、小柄で理解できない言葉を話していた。皆同じような顔で、個体識別が難しい。 文明は進んでおらず、私の一挙一動をじっと見ていた。 自然に、お互いあまり干渉…
そいつは、沼の底からべっとりと浮かんできた。 膨らみ、黒ずんだからだ、飛び出た目と舌、ゆらりと尻尾が水をかく。こちらに向かって手を合わせた。 土左衛門の事を黒仏という。 濡れ仏、ならぬ塗り仏。
遺体を埋葬しないで置いておくと、やって来て「いつまで」と鳴く。 だからもう3年も、こいつの声を無視している。 仕事はないし、もとより働く気力もない。 母の年金だけが頼りなのだ。「いつまで、いつまで」 声も母親と同じだ。 いつまで? 俺が死ぬとき…
風の強い夜、野原で盲人を殺した。 やつらの耳は良いが、今日はススキが煩い。足音は気にせず近寄れたよ。 で、こいつは金を持っていた。 俺は早速賭場に向かった。妙なんだな。 俺の向かいで賭けてる奴が、 さっきの盲人にそっくりだ。 そいつはひどくツイ…
陸で生活する河童の親類。 その昔、人足として秘術により命を吹き込まれた藁人形が、河童になったとも言われる。 人に害をなすところを見ると、良い使われ方をしなかったのか。 魔術も技術も同じ。間違って使ってしまえば、容易く主人に牙をむくようになる。…
沢の方から、ひっきりなしに、小豆を研ぐ音がする。 小豆を数えるのが上手だった小僧が、 殺されてしまい、その怨念とも言われる。 寺が近所になくても現れる。 音を頼りに探しに行くと、沢に落ちると言う。 「小豆磨ごうか、ヒト取って食おか」 と、歌って…
海への恐怖は、誰もが持っている。 人知の及ばない海底への不安、 人が生きていけない環境への恐怖、 にもかかわらず、人はそこから生まれ進化したのだという畏敬の念。だから海坊主は、世界中に現れる。 あちこちで人を飲み込み、船を沈める。
後ろ髪を引かれる、気持ちはこの妖怪が本当に後ろ髪を引っ張るから。道理で振り替えってしまうものだ。 この神様は、髪を引かれた当事者にしか見えないし、いつも背後にいるから、その姿を見た人はいない。 どんなに急いで振り向いても、後ろ髪をしっかり掴…
また叫んでいる。 死んだ親父だ。 よっぽどあの田んぼに執着があったのだ。田を返せ、田を返せだと。 誰に言ってるんだ、あれはもう俺の田んぼじゃない。 売り払っちまった。 なのに、あの声が聞こえるのは俺だけだ…。うるさいな。 肥やしになるかと思って、…
お気に入りのパートナーは、死ぬまで愛して心を満たし、屍は保管し、空腹を満たす。愛情と執着の境界線が見えなくなった、蜘蛛がいた。 絡新婦とも字を当てる。
色が白くて水っぽく、角があるのに崩れやすい、放っておいたらすぐ腐る。今の子供のような妖怪。 売り余って畑に捨てられた、豆腐の幽霊なのか。
一心岩をも通す。 強い気持ちは、進化を逆行させ、 哺乳類の肉体を爬虫類まで引き戻し、 そこから新たな方向に進化させ、 巨大な、火を操る体を身に付けた。一世代、一身限りの超絶進化。 肉体への負担は大きく、彼女の行方は知れない。この非科学的な進化を…
真っ赤な赤ちゃんが、 行灯の油をなめる。ずるずる。 灯が消える。赤ちゃんが光っている。 下にある、油差しの油を飲む。ごくごく。ダニの様に膨れ上がった赤ちゃんは、 ポンポンとお腹で弾んで部屋を出る。 廊下に続く丸い油の痕、ふと消える。
わたしゃ、何でもないものだよ。 あんたのお爺ちゃんでもない…。 そんな事ばかり言っているお爺ちゃんは、 家の奥の客間にいる。家族のみんなは、そこには誰も居ないという。そんな事は知らない振りをして、 僕は今日もお爺ちゃんに会いに行く。
有名な空き家がある。 天井には色とりどりの不気味なシミがあり、屋敷の「ウリ」となっている。部屋の中央、シャンデリアの周りにはシミがない。このシャンデリアで、空き家の主だった画家が首を吊ったのだ。 噂では、天井の染みは、画家の幽霊が付けている…
頭は猿のよう、 手足は虎のよう、 胴は狸のようで、 尾は蛇のよう。 多分もっと普通の姿だが、 直喩を隠喩にしてしまい、 猿の頭、虎の手足、胴は狸、尾は蛇、と言う 言葉の化物が出来上がった。言い忘れていた。 その鳴き声は、鵺のよう。 ヌエのよう? じ…
未知の対象は全て視界に入れないと不安でしかたがない、そんな人間の性質を逆手にとった妖怪。 見上げてもどんどん背が伸びて、ひっくり返る最後まで視界には収まらない。そのあと、上から喉にかぶり付かれるという。
顔が、体を離れて飛び回る。よく見ると、細い糸のような首で辛うじて繋がっている。だから、急に目の前に現れた糸をハサミで切ったら近所の誰それが亡くなったりする。また曰く、首が糸に見えているのは当の本人だけで、周りからは人魂の様に見えていたり、…
雨の気が凝り固まったもの。 雨の日の倦怠感や頭痛、鬱な気分は彼女の仕業。 多分、じっとりと重たい恋愛が好き。 失恋したときのだるい、力が入らない感じが好き。 そのあと、時間をかけて行う、復讐も好き。 日本は温暖湿潤気候、涙はなかなか乾かない…。
例えば、干してあるバスタオルやシーツなんかを、お店の暖簾みたいに切り込んじゃう奴。 シャツを背開きにしちゃう奴。
暴風雨を操る片目の竜。神社に祀ってあることもある。東海道は桑名宿の周辺で神社を見たなあ。
雁木のようなギザギザした歯を持つ河童。 魚は骨まで食べられる。 いや魚どころではなく、