極彩妖怪百物語

妖怪画家が、過去の怪画を怪説付きでご紹介。怪説は全て創作です。

2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

017 #黒髪切

女性の結い上げた髪を、背後から音もなく切り落としていく妖怪。明治の新聞にも載っている。髪はそこに棄てて行く。

016 #日間虫入道

夜、行灯の火を消して仕事の邪魔をする妖怪。朝になると決まって行灯の油の中に浮いている…日間虫って、ゴキブリの事だよ。

015 #川赤子

川辺で赤子の泣く声がする。探しても見つからない。泣き声は止まなくて不思議な気分になる。

014 #狂骨

井戸から出てくる妖怪。こんなのが出てきたら、ビックリ。とんでもないと思うだろう。

013 #元興寺

奈良の元興寺に現れ、夜な夜な小坊主を殺したため退治された。元はこの寺で働いていた男だったと言う。

012 #白澤

中国の神獣。 統治者が有徳であれば姿を表すと言う。 ここしばらく誰も出会って居ないらしい。姿を表したことは一度しかないが、互いに全然似ない、 色んな絵姿が残されている。 本当は誰も見たことが、 つまり会ったことが無いんじゃないか。当地者が有徳で…

011 #方相氏

子供の夢に現れ、 これからの将来、 事故は怖くないか、 病気は怖くないか?と訊き、 怖いと言うと剣で突き刺す。傷口はどろどろに腐る。って昔の妖怪図鑑に書いてました。 流石にそんな。 夢で刺されたのに。

010 #あかなめ

夜中に風呂場に現れ、せっせと垢を嘗める妖怪。みんなお風呂に飼っているんだよ。 人間のからだの、皮脂、角質、化粧品や整髪料が大好きで、お風呂の床下でにやにやと目を細める。 で、皆が寝静まると浴室に忍び込み、美味しそうにあちこち嘗めるんだよ。 味…

009 #舞い首

三人の仲が悪い武士、喧嘩の結果の巴打ち。 死後もお互い掻き切った、三つの首が海の上。 炎を吐いて舞い狂い、果てなき喧嘩と浪の花。 なんて韻文を即興で考えた。 悪くない。 あとは、あの三つの頸の目を掠め、 無事に帰って清書するだけだ。

008 #ぶるぶる

体がぶるぶると震えるのは、この妖怪が襟元にしがみついてぶるぶるするからだ。目には見えないけど、そうなんだ。今だってそうだ。 僕が震えているのは、ぶるぶるのせいであって、 目の前の「あれ」が怖いからじゃない。主に、臆病者に取り憑く妖怪。

007 #ももんじい。

いきなり襲ってくる妖怪。街中だったり、山の中だったり。ももんがぁ!と叫んで走ってくることもある。怖い怖い。良くある話。 どの街にも必ず1人は居る、 叫びながらおってくる爺さん。 変人の類。祖父も父も、同じ爺さんに追われたという。 さて、 私が全…

006 #山彦。

向こうの山に向かって「ヤッホー」と言うと、向こうからも「ヤッホー」が反ってくるのがこの妖怪。向かいの山に、山彦が居た。 帰ってくる声は、たしかに自分が先刻発したものとは違う声だった。 ある日地震があり、山びこは向かいの山ごと姿を消してしまっ…

005 #野衾 のぶすま。

山で、ムササビのように飛んできて、頭をくるんでしまう妖怪。ムササビではない。ある山の話。 事故が多く、独りだと転落した。大体の場所も決まっていた。多発しているのに、誰も事故の瞬間を見たものは居ない。 また、遺体は大抵損傷が酷く何ヵ所も骨折し…

004 #しろうねり。

納屋などでカチカチになっているボロボロの手拭が、生きているかのようにぬるりと動き出す。ある絵描き、絵具用の雑巾に襲われた事がある。筆を拭いていたら、手首に巻きつきするすると首まで来たという。 引き離し、押さえつけて気付いた。これ本当は雑巾じ…

003 #砂かけ婆。

京都の竹藪に潜み、頭上から砂を撒いてくる。姿を見せないが、婆だと言う。婆がさらさらと砂をこぼしている。 砂はいつまでもこぼれ続ける。 乾いた髪の毛から流れでて洞穴のような眼窩に流れ込み口から再び外に流れ出す。 婆も砂で出来ているかのように、流…

002 #恙(つつが)虫。

噛まれると大変な虫。故に無病息災であることを「恙無し」と言う。 今は、ダニの一種の名称となっている。 ツツガムシ病。野山でツツガムシに刺されて2週間。悪寒と高熱が生じ、頭痛、筋肉痛、倦怠感に襲われる。全身に紅斑、紫斑が浮き、さらに眼の充血、…

001 #黒坊主

夜中にやって来て押さえつけ、呼吸を止め、悪夢を見せて寝苦しくする妖怪。同じことをする妖怪に、「黒玉」というのがいる。 悪夢を見たことがある。 木目模様の全身タイツを身に纏ったようなのっぺらぼうが、その顔を私の顔に押し付けて、「ふーーーーっ」…