木から下がってくる怪異。
武士は刀を構えていた。森の中を静かに進む。
湿った風が吹き、木々の隙間から馬の首が下がった。閃光一閃、馬の首は切り払われた。
木々を見上げるが何もない。
馬の首は血を出しながら転がっている。
武士はさらに進む。
湿った風が吹いた。
間髪を入れず、木々の隙間から「侍」が下がってきた。
武士は反射的に凪ぎ払う。首が藪に飲み込まれた。
前方に古井戸がある。中から何かがこちらを窺う気配。
武士は井戸の縁に手をかけ、頭を突っ込んだ。
井戸の脇に首のない馬が死んで居たことを認識した刹那、武士の首は薙ぎ払われ、藪のなかに飛び込んだ。