極彩妖怪百物語

妖怪画家が、過去の怪画を怪説付きでご紹介。怪説は全て創作です。

2020-10-14から1日間の記事一覧

096 #ケッカイ

子供の代わりに生まれてくる。 囲炉裏の自在鉤を伝って屋根に逃げる。 妊婦に見せると気が触れるので、見てしまう前に殺してしまう。そう言い聞かせておいて、 生まれた瞬間、妊婦が不安のあまり、自在鉤に目を遣った刹那、赤子から目を逸らした刹那、 臍の…

095 #袖引き小僧

今日は、袖をひいてはくれないのか…。 遥かに川を見下ろす橋のたもとで男は呟いた。辛い会社。生活の無い家。 生きる意味の無い生活。 ある日、川を眺めていると、確かにはっきりと、袖を引かれたー川の方に。 「誰かが解ってくれている」逆にそう感じた。 …

094 #猫又

ペットが可愛くなくなったから、 歳を取って懐かなくなったから、 新しいのを飼おうかな。 増えても何だし、今のペットは…。 食べてしまおう。 にゃあ、にゃあ。

092 #旱神

イナゴも食べ尽くした。 大地のヒビはますます深く、広くなっていく。 暑さと渇きでまともな意識ではない。 在らぬ物も見え始める。干からびた大地に跳び跳ねる怪物を見た。 目がひとつ、手がひとつ、足も一本。 ひとまわり大きく見える太陽を背にして、 嬉…

091 #鬼

小人の国に流れ着いた。 蒸し暑く、我が国の気候とは違った。 彼らは膚が黄色く、瞳と髪が黒く、小柄で理解できない言葉を話していた。皆同じような顔で、個体識別が難しい。 文明は進んでおらず、私の一挙一動をじっと見ていた。 自然に、お互いあまり干渉…

090 #塗り仏

そいつは、沼の底からべっとりと浮かんできた。 膨らみ、黒ずんだからだ、飛び出た目と舌、ゆらりと尻尾が水をかく。こちらに向かって手を合わせた。 土左衛門の事を黒仏という。 濡れ仏、ならぬ塗り仏。

093 #いつまで

遺体を埋葬しないで置いておくと、やって来て「いつまで」と鳴く。 だからもう3年も、こいつの声を無視している。 仕事はないし、もとより働く気力もない。 母の年金だけが頼りなのだ。「いつまで、いつまで」 声も母親と同じだ。 いつまで? 俺が死ぬとき…

089 #手の目

風の強い夜、野原で盲人を殺した。 やつらの耳は良いが、今日はススキが煩い。足音は気にせず近寄れたよ。 で、こいつは金を持っていた。 俺は早速賭場に向かった。妙なんだな。 俺の向かいで賭けてる奴が、 さっきの盲人にそっくりだ。 そいつはひどくツイ…