極彩妖怪百物語

妖怪画家が、過去の怪画を怪説付きでご紹介。怪説は全て創作です。

089 #手の目


風の強い夜、野原で盲人を殺した。
やつらの耳は良いが、今日はススキが煩い。足音は気にせず近寄れたよ。
で、こいつは金を持っていた。
俺は早速賭場に向かった。

妙なんだな。
俺の向かいで賭けてる奴が、
さっきの盲人にそっくりだ。
そいつはひどくツイていて、まるで手のなかの札が見えているみたいにアて続け、手に入れたばかりの俺の金を全部巻き上げて賭場を後にした。

俺は追いかけた。
奴も盲人だ。さっきと同じにやればいい。
野原で追い付き、風に紛れて近づく。
奴が振り向いた。
俺に向けて両手をぱっと突き出した。
「同じ手を二度も喰らうか」
敵意に満ちた目が、両の掌から俺を睨み付けた。