臨終間際の爺さんをじっと見つめる猫がいた。 あれはどこの猫かしら。ここらで見ない顔だけど。 そして葬式の日、俄に黒雲が拡がったかと思うと、 猫と爺さんの遺体が消えた。
からかさを一瞬にして骨だけにする魔物 皮を剥がれた傘はおちょこになっている。 台風の時、よく出逢う気がする。 骨だけしかない自分の体に纏うために、傘の皮を奪うのだろうか。 では、傘をさしていない人は、気を付けないと。
飯を食わない、と言っていた女房は、 実は食べているところを見られたくない女房だった。 どうしてかと言うと、鯨のように喰うから。 それから、実は彼女は化け物で、正体を現さないと飯が食えないから。 さらに、正体を現すと、口の位置がー
月の中に棲んでいて、目を凝らしてみていると、 手招きを始め寿命を縮める。
誰も居ない山奥で、とんでもないものとすれ違う。 大きなヤシの木が跳ねているのかと思ったが、上に顔があった。 一瞬ですれ違い、もう居なくなった。 丸い足跡だけが残っている…。
通学途中のデパートで、 いつもショーウインドーを熱心に除き込んでいる、 お洒落な女性が気になった。 何とか顔が見えないものかと、 すぐそばを通り抜ける。 ショーウインドーには何かの仮面がディスプレイしてある。シワだらけの爺の面だ。呪い用か。 仮…
頼豪阿闍梨は、まだ怒っている。 三井寺の奥で、比叡山を睨み付けている。 その身体は、芋虫のように蠢く鼠で びっしりと覆われている。 阿闍梨が怒りに震える度に、 鼠が十数匹、体を離れ、 比叡山に向けてまっしぐらに駆けていく。
子供の背格好をした鬼で、墓に現れ、遺体を掘り出して食べている。だから今は火葬が一般的になったのだとか。灰を食べたという話は聞かない。
蝋燭や、行灯の明かりをふっ! とひと吹き、闇を作り出し妖怪と人間との出会いの場を提供します。 今は電線をショーとさせ、同様の効果を幅広い世帯に提供しています。
つきものの大御所。犬かと言うと、そうではないらしい。沢山の伝承を西日本に残すが、厄介な魔物である点は共通している。
男と情を交えるために、よみがえった骸骨。その動機が消えない愛情なのか、補食への衝動なのか、私は知らない。
蛇身の女怪。水辺にて男性を襲う。 蛇女、という名前にしないところが奥ゆかしい。
琉球王国の習わしで、 王は年に一度、ザンの肉を食べ、長寿を得るという。 ザンとは何かって? そりゃ、人みたいな魚だよ。こんな話に尾ひれがついて、人の口から口へと泳いで北上し、江戸につく頃にはりっぱな人魚伝説。結局ザンとは何かって? 実はいるん…
背後から覆い被さって、気絶させる妖怪。 立ち眩みや失神は、この妖怪のしごと。 最近は、自動車を運転する老人に目をつけ、社会的地位に関係なく、襲いかかって居るらしい。
赤い顔、高い鼻、修験者の姿のものは、言うなれば、 天狗になった人。所詮猿真似の類。 本物は、山であり森であり自然そのものである。 山で起きる全ての怪異と恵みの総称。 この先も人間と最後まで対立する、自然の誇り。 アマツキツネ、其れが「天狗」
橋の守り神で、嫉妬深く、カップルで渡ると良くないことが起きる。 恋の架け橋、なんて誰が言った。
俺の母親は俺を生んだときに死んだ。そして産女になった。聞こえるだろ、あの声だ。外にいて、俺を呼んでいるらしいんだよ。
消えない煙のなかに、人や獣の姿を見つけるのに夢中になってると、逃げ遅れてしまうよ。 火の無いところに煙は立たぬ。
あなたへのおもいせつないきもちを なんでもことばにしてかみにしるし たのしむまいにちもあったのですが がらすのように、こわれたきずな にっきもこいぶみもつもりにつもり くさりはててまざりあってやがて いぎょうのものになりましたとさ
どうしても、何かで大陸に勝ちたくて昔の日本人が作り上げた魅力的な幻想。
悪人は死んでも悪いまま。成仏などは夢の夢。 だからまた、弱いものをいじめにいく。
盗んだ油が、寺社仏閣のモノだったばかりに、死後にこんな姿で彷徨うことになろうとは…。 おや、あそこに私と同じような事をしている人が居るよ。行ってみよう…。
居眠りをするお坊さんを叱るために走り回っている。
うわん、と鳴くのかも未詳。何をするかも不明。犬の妖怪かも知れない。
誰かが自分の命を断つ。 すると、近くの誰かも命を断つ。 そしてまた、近しい誰かが命を断つ。 死神のロープは、人を繋いでいく。延々と。
江戸の妖怪の総大将は、実は狸が化けたもの。
京都に暗躍した鬼の大将。 鬼を肘置きにし、美女を拐かし、酒を呑んだと云う。
周りの明かりをどんどん吸い取って、暗闇にしていく妖怪。そして、妖怪が闇に現れ始める。
山を歩いていると、突然襲われる…空腹に。からだの力が抜け、目がかすみ、喉がからからになる。 食べ物の持ち合わせがなければ、死ぬと言う。
仏教を汚す黒い鶴。どういう訳か寺で良く見つかる。