極彩妖怪百物語

妖怪画家が、過去の怪画を怪説付きでご紹介。怪説は全て創作です。

2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧

070 #火車

臨終間際の爺さんをじっと見つめる猫がいた。 あれはどこの猫かしら。ここらで見ない顔だけど。 そして葬式の日、俄に黒雲が拡がったかと思うと、 猫と爺さんの遺体が消えた。

069 #骨からかさ

からかさを一瞬にして骨だけにする魔物 皮を剥がれた傘はおちょこになっている。 台風の時、よく出逢う気がする。 骨だけしかない自分の体に纏うために、傘の皮を奪うのだろうか。 では、傘をさしていない人は、気を付けないと。

068 #食わず女房

飯を食わない、と言っていた女房は、 実は食べているところを見られたくない女房だった。 どうしてかと言うと、鯨のように喰うから。 それから、実は彼女は化け物で、正体を現さないと飯が食えないから。 さらに、正体を現すと、口の位置がー

067 #桂男

月の中に棲んでいて、目を凝らしてみていると、 手招きを始め寿命を縮める。

066 #山爺

誰も居ない山奥で、とんでもないものとすれ違う。 大きなヤシの木が跳ねているのかと思ったが、上に顔があった。 一瞬ですれ違い、もう居なくなった。 丸い足跡だけが残っている…。

065 #否哉 いやや

通学途中のデパートで、 いつもショーウインドーを熱心に除き込んでいる、 お洒落な女性が気になった。 何とか顔が見えないものかと、 すぐそばを通り抜ける。 ショーウインドーには何かの仮面がディスプレイしてある。シワだらけの爺の面だ。呪い用か。 仮…

064 #鉄鼠

頼豪阿闍梨は、まだ怒っている。 三井寺の奥で、比叡山を睨み付けている。 その身体は、芋虫のように蠢く鼠で びっしりと覆われている。 阿闍梨が怒りに震える度に、 鼠が十数匹、体を離れ、 比叡山に向けてまっしぐらに駆けていく。

063 #魍魎

子供の背格好をした鬼で、墓に現れ、遺体を掘り出して食べている。だから今は火葬が一般的になったのだとか。灰を食べたという話は聞かない。

062 #火消し婆

蝋燭や、行灯の明かりをふっ! とひと吹き、闇を作り出し妖怪と人間との出会いの場を提供します。 今は電線をショーとさせ、同様の効果を幅広い世帯に提供しています。

061 #狗神

つきものの大御所。犬かと言うと、そうではないらしい。沢山の伝承を西日本に残すが、厄介な魔物である点は共通している。

060 #骨女

男と情を交えるために、よみがえった骸骨。その動機が消えない愛情なのか、補食への衝動なのか、私は知らない。

059 #濡れ女

蛇身の女怪。水辺にて男性を襲う。 蛇女、という名前にしないところが奥ゆかしい。

058 #人魚

琉球王国の習わしで、 王は年に一度、ザンの肉を食べ、長寿を得るという。 ザンとは何かって? そりゃ、人みたいな魚だよ。こんな話に尾ひれがついて、人の口から口へと泳いで北上し、江戸につく頃にはりっぱな人魚伝説。結局ザンとは何かって? 実はいるん…

057 #覆い掛かり

背後から覆い被さって、気絶させる妖怪。 立ち眩みや失神は、この妖怪のしごと。 最近は、自動車を運転する老人に目をつけ、社会的地位に関係なく、襲いかかって居るらしい。

056 #天狗

赤い顔、高い鼻、修験者の姿のものは、言うなれば、 天狗になった人。所詮猿真似の類。 本物は、山であり森であり自然そのものである。 山で起きる全ての怪異と恵みの総称。 この先も人間と最後まで対立する、自然の誇り。 アマツキツネ、其れが「天狗」

055 #橋姫

橋の守り神で、嫉妬深く、カップルで渡ると良くないことが起きる。 恋の架け橋、なんて誰が言った。

054 #産女 うぶめ

俺の母親は俺を生んだときに死んだ。そして産女になった。聞こえるだろ、あの声だ。外にいて、俺を呼んでいるらしいんだよ。

053 #煙々羅 えんえんら

消えない煙のなかに、人や獣の姿を見つけるのに夢中になってると、逃げ遅れてしまうよ。 火の無いところに煙は立たぬ。

052 #文庫妖妃 ふぐるまようび

あなたへのおもいせつないきもちを なんでもことばにしてかみにしるし たのしむまいにちもあったのですが がらすのように、こわれたきずな にっきもこいぶみもつもりにつもり くさりはててまざりあってやがて いぎょうのものになりましたとさ

051 #九尾の狐

どうしても、何かで大陸に勝ちたくて昔の日本人が作り上げた魅力的な幻想。

050 #狐者異 こわい

悪人は死んでも悪いまま。成仏などは夢の夢。 だからまた、弱いものをいじめにいく。